ポーカーにおけるIndifferenceという概念は最も誤解されている概念の一つです。
「Indifference」という言葉は2つ以上の行動が同じ価値を持つことを意味します。これはポーカー理論を学ぶ上で非常に重要な概念です。
GTOソリューションの解釈は多くの場合、科学というより芸術です。
GTOにおいては厳密な法則は殆どありません。それゆえ、絶対的な「Indifference」の法則を学ぶことが不可欠です。
この記事ではナッシュ均衡を構成する「Indifference」の基本的な「厳格な法則」について解説します。これらの法則はGTOと搾取的なスタイルを含むすべてのポーカー戦略の両方に適用されます。

自分勝手なEVの法則(Selfish EV)
自身の残りのレンジのEVを改善させるために今持っているハンドのバリューを犠牲にすることはありません。完璧な戦略は常にすべてのスポットでそれぞれの手で最高のEVアクションを実行します。
残りのレンジの期待値を改善するために-EVの動きをするようなことはありません。自身のコールレンジを守るためにあえてコールしてお金を減らす必要などあるはずがありません。
自分勝手なEVの法則とは、「Indifference」の法則を示唆しています。
「Indifference」の法則
ハンドに複数のアクションがソリューション解として混在している場合、それらのアクションのEVは同じ値になります。
例えば、あるハンドがコールとフォールドの間で混在している場合、コールしたときの期待値は0になります。
例)UTGオープン、BTN3betに対するUTGのアクション。KQsはコールとレイズが同じEVである。

画像の例でGTO Wizardの「Strategy + EV」のビューを確認しました。KQsはコールとレイズがともに0.31bbの期待値を持っていることが分かります。このように二つのアクションが混在している時、すなわち2つのアクションは「Indifference」であるということです。
このレンジでは多くの混合戦略が見られます。A5s (EV 0)はフォールド、コール、4ベットいずれのアクションもあり得ます。QQ (EV 42.7)はAllin、4ベット、コール。88 (EV 0)はフォールドとコールのアクションが間で「Indifference」になっています。
純粋なアクションをとっているハンドはほとんどありません。このように戦略が混在しているのは、ありとあらゆる対抗戦略に対して、攻略させないようにするためです。
相手の不完全で搾取可能な戦略に対してはより純粋なアクションになる傾向がありますが、いずれにせよこれはGTOに依存した戦略ではなく、相手の戦略に依存した戦略になります。
稀にソルバーが-EVアクションを提案することがありますが、これはノイズの結果であり、十分に高い計算精度で解いたなら、そのノイズは消えます。真の均衡は、意図的にEVの低いアクションを選択することはありません。
固定戦略の法則
Indifferenceなアクションの中であれば、固定された戦略に対しては価値を失うことはありません。頻度のミスに対して、相手が戦略を適応させた場合にのみエクスプロイトされることになります。
しかし、この後のストリートのレンジが変われば、EVも変わるのではないか?
こういった疑問に対してはこう考えてみてください。
あなたがしたことは、同じEVを持つ2つのアクションをランダムに決定しただけです。この2つのアクションは、相手の戦略に対して同じ価値を持っているので、対戦相手が戦略を変えない限り、相手が得をすることはありません!
例えば、KKは30%の確率でコールし、70%の確率でレイズすることになっており、攻略不可能であると仮定します。しかし、実践では50%/50%の割合でプレイしていました。これは頻度ミスになりますが、どちらのアクションも同じEVを持っています。
したがって、相手が戦略を変えないのであれば、コールとレイズをどのように混ぜても、同じEVになるのです!しかし、これはあなたが好きなことをする許可を与えるものではありません。頻度ミスに対しては相手が適切に戦略を調整すれば、あなたの頻度ミスに対して罰することができるのです。
先ほどの例に戻りましょう。UTGがオープン、BTNが3ベット、UTGにフォールドの局面:

任意の頻度でフォールドするハンドをすべてフォールドしたと仮定してみましょう。
あなたのEVは変わるでしょうか?
答えは変わりません。あなたがしたことは、より多くの0EVの手をフォールドラインに移動させただけです。しかし、BTNはあなたのフォールド過多を利用し、より広い範囲で3ベットすることができます。この場合、あなたは実際には+EVの手をフォールドし続けることになり、あなたの価値を犠牲にすることになります。BTNがあなたのミキシングミスに対して利益を得るのは、彼らが戦略を変更したときだけであることに注意してください。
この概念を理解するためには、ある重要な点を理解する必要があります。
あなたの手札のベストアクションは、相手の戦略によってのみ決定される。あなたのレンジの混合戦略は、純粋に相手がどうプレイするかによって決まるのです。
GTOは固定された戦略です。そのため、頻度ミスに対しては得をしません。しかし、「純粋なミス」に対しては利益を得ることができます。固定戦略に対して損をする行動はすべて「純粋なミス」になります。
GTOは「どんなミス」に対しても利益を得ることができるという誤解があります。しかし、GTOは純粋なミスに対してのみ利益を得ることができます。
しかし、高レベルのプロでさえ、多くの純粋なミスを犯すのですから、心配は無用です。
